「炭田や油田の分布」と「造山帯の分布」の関連について

「炭田や油田の分布」と「造山帯の分布」の関連について

「炭田や油田の分布」と「造山帯の分布」には関連があるのでしょうか。

地理の教材に,「炭田は古期造山帯に多く分布し,油田は新期造山帯に多く分布する」という記述がみられることがありますが(※1),炭田の分布と古期造山帯(古生代の造山帯)にも,油田の分布と新期造山帯(中生代・新生代の造山帯)にも,対応関係はありません(図1)。炭田は古生代,油田は中生代・新生代という地質時代に,いずれも関係していますが,地下資源の生成と造山帯の形成(造山運動)では,地質時代との関係の仕方がまったく異なるため,それぞれ分けて考える必要があります。

北アメリカ大陸における化石燃料の埋蔵場所と造山帯の関係 図1 北アメリカ大陸における化石燃料の埋蔵場所と造山帯の関係

造山帯とは,造山運動を受けた,または受けている地帯をさし,地質に基づく陸地の区分です。具体的には,大陸や弧状列島をつくる「基盤岩(上部地殻)」が一体的に成長した範囲と年代に基づき区分されています。多数ある造山帯を大きな年代区分でくくった分類が,古い方から,安定陸塊(先カンブリア時代にできた大陸地殻),古期造山帯,新期造山帯になります(図2)。

地質時代区分と造山帯

図2 地質時代区分と造山帯

こうした専門用語がわかりにくい要因は,昔の訳語を引き継がざるをえないことにあります。とくに「造山」という語ゆえに,それが単に山地の形成をさすと誤解されています。そのため,「新期造山帯は険しい山地」「古期造山帯はなだらかな山地」「安定陸塊は平原」など,造山帯が地形の区分であるかのような解説がみられます。しかし,新期造山帯が山がちな地域であることは事実ですが,造山帯の基準はあくまで地質(岩石の種類・年代・配列)にあって地形にはありません。そこが山がちとなる原因が,その場の地殻が厚くなっていくこと(=造山運動)であり,山がちな地形の発達は,地殻の発達に伴う結果の一つにすぎません。また,基盤岩の構成を大きく変える造山運動がなくても,山地はしばしば形成されるため,古期造山帯や安定陸塊に区分される地域にも,新生代に隆起した山地が点在します。

一方,石炭や石油は,生物の遺骸を大量に含む「堆積岩」がいったん地下深くに埋没することで高温・高圧にさらされて形成されます。この炭田や油田のもとになる堆積岩は,石炭の場合は古生代に,石油の場合は中生代(※2)に,相対的には多く形成されています。しかし,炭田・油田のもとになる堆積岩の形成時期と,その場所の造山帯の年代(基盤岩の形成時期)には関係がありません。とくに油田を含む中生代以降の堆積岩は,古生代や先カンブリア時代にできた基盤岩の上にのっていることが多いことから,油田は新期造山帯に比べ古期造山帯や安定陸塊(卓状地)に多く分布しています。また,炭田は,安定陸塊のうちの卓状地,古期造山帯,新期造山帯のいずれにも分布します。

※1 プレートテクトニクス理論の確立以前は,造山帯の成因(造山運動)について現在と全く異なった解釈が主流であり,1970年代ぐらいまでは造山帯と地下資源は関係があるという前提でしばしば論じられていました。しかし,その後は造山帯と地下資源の分布を分けて考えるようになっています。

※2 ここで中生代に多いというのは,石油のもとになる岩石(油母頁岩〈ゆぼけつがん〉)の年代に着目した場合です。採取困難な石油も含めた資源量でみており,経済的・技術的に回収可能な埋蔵量を比べてはいません。石油は生成後,油母頁岩から離れて地層中を浮上し,別の地層に集積することで油田(在来型)になります。実際に人間が採りだせた石油の集積先でみると,相対的に浅い位置にある新生代の地層からの採取量が多いようです。(→詳しくはQ『油田が形成される過程について』を参照のこと)

【参考文献】 池田敦(2015-2016) 高校生に「大地形」をどう教えますか?,月刊地理 連載60(10),60(11),60(12),61(1),61(2),古今書院 http://www.kokon.co.jp/book/b307618.html