油田が形成される過程について

油田が形成される過程について教えてください。
(非在来型の石油については『シェールオイルについて』を参照)

一般的な油田(在来型の油田)が形成されるまでには,次の1~3の条件が順に揃う必要があります。

段階1 水生(主に海洋)の微生物の遺骸が水底にたまる(図1①)。その有機物は,ふつうはほとんどが分解されてしまうが,何らかの理由で水底付近に酸素が少ないと分解が進まず,有機物を大量に含む泥の地層ができる。

段階2 有機物に富む泥層の上に堆積物がたまっていく(図1②)。とくに地盤が沈降するところでは,堆積物が厚くたまり,その圧力のもと有機物に富む頁岩(けつがん)(=油母〈ゆぼ〉頁岩または根源岩)ができる(図1②~③)。根源岩が,地中深さ数kmに達し,地温が100℃前後になると根源岩中の有機物が原油へと変化していく(図1③~④)。

段階3 原油が根源岩から離れて拡散する(図1④)。原油は水より密度が小さいため,水が占めている地層中の隙間を上昇するからである。この原油の拡散経路上に,液体を多く含むことのできるすきまの多い岩石(貯留岩)が,液体を通しにくい隙間の少ない岩石にフタをされたように覆われていると,そこに原油が集積し油田となる(図2)。

原油の生成過程の模式図 図1 原油の生成過程の模式図

在来型の油田をつくる地質構造の例 図2 在来型の油田をつくる地質構造の例

段階3において,フタの役割をする岩石を帽岩(ぼうがん)とよびます。褶曲の背斜部に帽岩がフタ状の構造をつくると,その下に原油が集積します。教科書に「油田は褶曲の背斜部にできる」と書かれているのは,背斜が帽岩のフタ状構造をつくる典型だからです。実際に油田を探すときには,帽岩と貯留岩のペアが地下のどこにあるのかを探査します。

一方,広い地域で油田がどのような場所にあるのかを論じるときは,段階2の条件を満たす厚い堆積岩の地層が存在する地域を検討します。そのような地域のことを堆積盆とよびます。なお,堆積盆は新期造山帯とは関係なく分布しています(図3)。「油田は新期造山帯に多い」という記述がしばしば見受けられますが,油田の成因(段階①~③)に新期造山帯はそもそも関係がなく,むしろ油田は新期造山帯に少ないことが明らかです。(Q『「炭田や油田の分布」と「造山帯の分布」の関連について』も参照)。

堆積物からなる厚い地層が分布する地域(=堆積盆) 図3 堆積物からなる厚い地層が分布する地域(=堆積盆)

【参考文献】 藤田和男/島村常男/井原博之/トコトン石油プロジェクトチーム著(2014) トコトンやさしい石油の本,日刊工業新聞社