ケッペンの気候区分は,温暖化によって変化しますか?

ケッペンの気候区分は,温暖化によって変化しますか?

ケッペンの気候区分の境界線上はどちらの気候と捉えればよいですか?また,地球温暖化との関連で気候区分は変わることがあるのでしょうか?

1. 気候区分の境界線について

世界の気候区分の境界は,便宜上,曲線で示されていますが,実際は漸移帯となっています。気候学では月平均値からその標準的な気候特性を表現する場合が多く,それを静気候学的(平均値)気候区分と呼んでいます。

2. ケッペン気候区分の本質について

ケッペン気候区分も静気候学的気候区分に属しています。基本的に植生帯に注目し,それに適合する月平均気温や月降水量のデータを用いて気候区分を試みたものです。自然地理学的に極めて有効かつ普遍的な区分といえます。しかし,不変のものではありません。それは気候変動が起こる以上,当然のことでもあります(→3.)。植生帯は長い年月をかけて徐々に変遷しており,それと気候変動が一対一に対応しないこともあります。つまり,いったん干ばつが起これば 植生の減退を招きますし,大雨で急速に復活することもあります。また,気温変化が一方的に進行すれば,その数年ないし十数年後には影響が次第に効いて植生帯の移動を導くと考えられます。ただし,人為的な砂漠化などによって,自然気候と実際の植生にギャップが生ずることもあるでしょう。ケッペン気候区はあくまでもポテンシャル(潜在的な)気候ということができます。

3. 統計期間について

気候値は長年(通常30年間)の平均値を基準として区分されていますので,10年ごと(現在は1971~2000)の平均値の更新によって気候区が移るということもあります。マナウスやウランバートルの気候シフトはこれによるものです。

4. 地球温暖化との関係について

とくに北半球の高緯度地域で昇温傾向が顕著になっています。それは長期的トレンドでみた場合でもある程度現れています(100年間では約0.7℃の 上昇)が,1980年代後半からとりわけ明瞭となり(10年間で約0.5℃の急上昇),今回の統計期間の更新で境界領域に相当のシフトがあったと考えられ ます。

5. 年候について

あえて年々の気候データ(ある年の月別統計値)から気候区分を試みる場合があります。これを「年候」と呼び,その境界線の年々変動,あるいは分類された気候区の出現頻度を年代ごと比較するという研究もあります。

【参考文献】 水越允治(1980):年候からみた気候変動.河村 武『気候変動の実態』古今書院,3-19.

6. 大気(気団)の境界について

そもそも気候の主要な境界は,異なる気団(数千kmに及ぶほぼ均一な大気の集合体)と気団の境界領域である前線帯の位置によります。地表付近の大気はいくつかの気団によって成り立っていますが,その境界領域である前線帯は,画一的ではなく時々刻々と変動していますし,気団自体も変質作用を受け続けて います。1.に記した簡単に気候境界線が引けない所以です。

7. 動気候学的気候区分について

気候区分の境界は前線帯や天候急変域に基づき図示されるべきであるという考えによって,大気特性を重視した動気候学的気候区分も考案されています (→参考文献)。例えば,日々の天気境界(天気界)は寒帯前線帯や卓越風と大地形の関係などで識別可能であり,それを毎月集積させて気候区分を行うことが できます。将来的には,前線帯,熱帯収束帯,気団の状況をある程度反映している衛星画像の雲分布を利用した気候区分が示される可能性もあります。

【参考文献】 中村和郎(1996):世界の気候区分.『日本の気候』岩波書店,212-219. 山川修治(2000):静と動の気候区分.月刊地理,45(2),62-65.