ヨーロッパ

文化地域の形成と構造

概要

『ヨーロッパ —文化地域の形成と構造—』は,絶えず変化し続けるヨーロッパを理解するために必読である名著の邦訳です。ヨーロッパは,根底に文化的統一性が根を張っていますが,細かく見れば実に多種多様な地域のモザイクからなります。ヨーロッパの人々が共通の信仰や行動・生活様式を保持すると同時に,驚くほど多様な地域的な差異をみせていることを,本書はシステマティックに明らかにします。

説明

『はしがき』から抜粋

  • 第4版となる本書『ヨーロッパ—文化地域の形成と構造—』は、世界のなかでも魅力に富み、影響力があり,しかも絶えず変化しつつあるヨーロッパ文化地域に対する地理学的解釈を示すものである。本書は,ヨーロッパへの季節を異にする30回の旅行や野外調査で得られた体験に基づいている。こうした調査旅行は,ジブラルタルからノール岬(ノルウェー)まで,アイルランド西端の岬からロシアのステップやタイガの地域まで,あるいはキプロスからアイスランドやフェロー諸島に至る島々に及んだ。また,10年間に及ぶヨーロッパ・ロシアでの生活も反映されている。
  • 1996年に出版された第3版を大幅に改訂したこの第4版では,新世紀への入口にあるヨーロッパの姿を明らかにしていく。 この本は,地理学における豊かな人文主義の伝統に基づき,ヨーロッパを一つの文化的実在として理解しようと試みるものである。本書では,ときには一つのものとして,またときには多くのものとしてヨーロッパを扱っている。これは,ヨーロッパの人々が共通の文化を保持すると同時に,驚くほど地域的な多様性をみせることもあるためである。

著者プロフィール

  • T. G. ジョーダン=ビチコフ(Terry G. Jordan-Bychkov):1938年アメリカのテキサス州,ダラス生まれ。長い間,テキサス大学教授として教鞭をとる。世界屈指の地理学者。著書や研究テーマは,放牧業の 起源,民俗建築,埋葬慣習,森林開発,農業や農村生活など多岐にわたる。本書のほか『The Human Mozaic』などが日本ではよく知られている。2003年死去。
  • B. B. ジョーダン(Bella Bychkova Jordan):1961年,ロシアのシベリア,サハ共和国生まれ。旧ソ連地域や東欧を対象として,政治・文化地理学や地誌学を専門にしている研究者。

訳者プロフィール

  • 山本 正三:1928年静岡県生まれ。筑波大学名誉教授,理学博士。著訳書に『茶業地域の研究』(大明堂),『沿岸集落の生態』(共著,二宮書店),『日本の 農村空間』(共著,古今書院),『首都圏の空間構造』(編著,二宮書店),『現代日本の地域変化』(共編著,古今書院),『ラテンアメリカ入門』(単訳, 二宮書店),『人文地理学』,『農業変化の歴史地理学』(共訳,二宮書店)など。
  • 石井 英也:1944年栃木県生まれ。筑波大学歴史・人類学系教授,理学博士。著訳書に『アルプス』(共訳,二宮書店),『人文地理学』(共訳,二宮書店), 『ヨーロッパ文化』(共訳,大明堂),『地域と景観』(共著,古今書院),『地域変化とその構造』(二宮書店),『景観形成の歴史地理学』(二宮書店), 『鹿沼市史 地理編』(共編著,鹿沼市)など。
  • 三木 一彦:1971年京都府生まれ。文教大学教育学部准教授,博士(文学)。訳書に『フランス文化の歴史地理学』(共訳),論文に「秩父地域における三峰信 仰の展開」,「江戸における三峰信仰の展開とその社会的背景」,「アルザスにおける言語の現状とその地域性」,「フランスにおける地域言語の推移と現状」 など。

目次

第1章 ヨーロッパとは何か

(大陸神話/人文的実在としてのヨーロッパ/ヨーロッパの偉大な思想/ヨーロッパの境界/前進と後退)

第2章 自然環境

(ヨーロッパの山地/地震と火山活動/ヨーロッパの平原/ヨーロッパの丘陵/人間による地形の改変/主な気候類型/気候の亜類型/気候への人間の影響/植生地域/森林の枯死/土壌地域/アンスロソル/水文/オランダ人による海岸線の改変/海岸における泥土の堆積)

第3章 宗教

(異教時代のヨーロッパ/キリスト教の伝播/キリスト教の分裂/ローマ・カトリック/巡礼/プロテスタント/東方正教/東西の境界/東方帰一教会とアルメニア教会/キリスト教離れ/セクトとカルト/非キリスト教の少数派集団)

第4章 言語

(インド=ヨーロッパ語族/インド=ヨーロッパ語の伝播/ロマンス諸語/ゲルマン諸語/スラブ諸語/ケルト諸語/他のインド=ヨーロッパ語の語派/非インド=ヨーロッパ諸語/言語の衰退と再生)

第5章 地遺伝学

(ヨーロッパの人種的自己認識/外来人種の流入/伝統的なユーロポイドの亜人種/血液化学/DNA研究/ネアンデルタール人と現代人)

第6章 人口

(人口数/人口密度と分布/人口流出/人口流入/域内人口移動/人口増加ゼロ/人口の崩壊か/年齢構成/教育/健康状態/豊かさ)

第7章 政治

(分裂状態/分離独立主義/民族的要因/非民族的な分離独立主義/国家の諸類型/国境/フランス—成功した統一国家—/ドイツ—ヨーロッパの核心部における連邦制—/イギリス—ヨーロッパ核心部と周辺部の接点—/イタリア—ローマの遺産—/スペイン—多民族国家—/スイスとベルギー—多言語国家—/ユーゴスラビア—バルカンの悲劇—/ロシア—国民国家か帝国か—/ウクライナ—国境地域から独立国家へ—/ヨーロッパ連合(EU)/NATOとその後 /選挙の地理)

第8章 都市

(商業都市/工業都市/反都市化現象/都市の立地/都市景観/都市内部の地域構造/居住パターン/都市の諸類型/都市網)

第9章 第一次および第二次産業

(歴史的展開/伝統工業の制度/産業革命/大陸への産業革命の伝播/炭田地帯以外への工業化の拡大/鉱工業の衰退/鉱工業の再生/核心地域と周辺地域/環境破壊/緑の党の活動)

第10章 サービス産業

(幹線道路/道路の交通渋滞/鉄道/水路/パイプライン/航空交通/通信/ユーロモバイル/エネルギー生産/環境のコスト/生産者サービス業/消費者サービス業/観光業/観光の功罪)

第11章 農業

(農業の起源と伝播/地中海式農業(作付耕地・樹園地・牧場)/地中海地域の農村景観/三圃式農業/村落と耕地/限界地の牧畜=農耕民/北ヨー ロッパの焼畑農民/遊牧/新しい作物の導入/専門化と商業化/市場園芸/酪農/牛と豚の肥育/牧羊業/商業的穀物農業/トナカイ放牧業/魚類養殖業/農地の整理統合/土地所有の変化/核心と周辺の分化/農村の人口減少/農村景観の保全)

第12章 ヨーロッパの地域構造

(諸地域からなるヨーロッパ/西対東/北対南/核心部対周辺部/8つの地域)
ヨーロッパ書影
  • 発行日:
  • 判型:A5判
  • ページ数:482ページ
  • 定価:6,380円(本体:5,800円)
  • ISBN:978-4-8176-0236-7
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