「侵食」は「浸」と「侵」のどちらが正しい?

教科書では「侵食」の「侵」を「浸」ではなく「侵」にしていますが,その理由は何ですか?

確かに国語辞典では「浸食」を用いているものが多くあります(『角川国語大辞典』,三省堂『広辞林』,『広辞苑(第四版以降)』など)。一方,地理学の用語としては「侵食」を用いるのが一般的ですが,「浸食」の表記を用いるものも見受けられます。

弊社教科書は,『文部省学術用語集 地学編』および『地形学事典(二宮書店)』に準拠し,表記を「侵食」に統一しておりますが,「浸食」と表記することも誤りではございません。

ちなみに,戦前には,日本の地形学の古典である『新考地形学』をはじめ,すべて「侵蝕」を用いていました。“おかし,むしばむ”という意味で,現象の特徴をもっともよく表現しています。戦後は当用漢字(常用漢字)に「蝕」がないので「食」をあて,「侵食」を用いるようになりました。

用字・用語の表記につきましては,学習指導要領の改訂など,新しい教科書を発行するタイミングに合わせて,時代の趨勢を鑑みながら検討してまいります(2017.6.19修正)。